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「自律」「循環」にこだわる縫製工房。MAARU FACTORYの描く沖縄の未来予想図とは。

2024.11.20

・MAARU FACTORのはじまり

 

 

物理的には豊かとされる現代社会。

しかし実際には、経済・就労状況や様々な支援体制など多くの社会課題を抱える沖縄の「今」を、戦後復興を支えた「お母さんの縫製」に立ち返り再起させたい。

 

このような思いを背景に立ち上げられた 地域循環型工房MAARU FACTORY(以下「MAARU」記)は、ブランドや作品に沖縄や自律のコンセプトが感じられる商材を扱い、縫製業界では珍しく「1点からでも」縫製依頼をお受けされていらっしゃいます。

 

そんなMAARUの誕生は、代表野原さんとパートナー大坪さんの根底にある「自然溢れるふるさと」への気づきと想いに出会ったことから始まりました。

 

 

 

 

何もない、物足りないと思っていた場所が守っていた “ 循環 ”というかけがえのないしくみ。

生まれ故郷の違う野原さん・大坪さんおふたりが抱いた ふるさとへの共通の想いが、今、沖縄という地で ものづくりの「大量生産化」から「多品種小ロット化・付加価値化」への移行に挑戦しています。

 

 

 

 

 

・MAARU FACTORが社会の中で担う役割とは

 

 

工房が大切にしているのは、小さなブランドであっても、そのブランドの持つ「わたしたちしかできない」ものづくりと、踏み出すその一歩に敬意を示すということ。

 

想いをカタチにする工房側としては、従来の工場のように要望通りに納品して終わりではなく、挑戦を応援する伴走者という在り方にもこだわっていらっしゃり、実際にこのスタンスは ブランド様との信頼感を築くことに繋がっているそうです。

 

このような想いで ものづくりの価値観をアップデートされる中、MAARUの挑戦のフィールドは縫製業に止まらず、「産業課題と社会課題の掛け合わせ」で皆がしあわせになる仕組みづくりへとご展開中。

 

 

 

 

実は、この小さな縫製工房からは、資源循環、伝統・技術の継承など、受注縫製以外の事業(スクール事業・社会課題解決事業)が生まれています。

 

このようなテーマが持ち上がると、

儲かるの?

綺麗事だけでやっていけるの?

そんな声もチラホラ聞こえてきそうな世知辛いこの世の中。

 

それでもおふたりの口から何度も出てくるのは「自分だけの成功はどうでもいい」ということ。

誰か一人が成功しても意味がない。全体が良くならなければ意味がない。

そして、何かを生み出すという行動や技術の価値を 再認識するきっかけを作りたい。

そこには、戦後復興の沖縄や日本の経済成長を支えた縫製業のジャパンクオリティーと、たくましく生きた先人への敬意、

そして、その縫製技術で、かけがえのない資源や技術を守り続ける人々に 自律の道を作りたいという想いがありました。

 

 

 

 

 

・MAARUを生んだ二人について

 

 

「自分の子どもも小さくて大変な時に、こんな難儀をしなくてもいいんじゃない?」

工房代表野原さんは、時に、彼女を思いやる周りの気持ちから このような言葉をかけられるのだとか。

しかし野原さんにとって、MAARUで仲間とものづくりをすることがご自身のアイデンティティの確立にも繋がっているのだそうです。

 

 

 

 

 

明るく溌剌(はつらつ)として、前向きでエネルギッシュ。

そんな印象を受ける野原さんですが、妊娠・出産をきっかけに、アイデンティティーの大きな揺らぎをご経験されたとのこと。

幸せなはずの我が子との生活で感じたのは、社会からの疎外感や、積み重ねてきたものへの喪失感。なぜか失われた自尊心。

そしてそんな孤独なステージに立った時、「こんな自分を救えるのは自分自身しかいない」のだと最終的には行き着き、沖縄を盛り上げる起業の道に飛び込まれました。

 

 

一方、兵庫県の 山や森に囲まれた自然の中で生まれ育った大坪さんは、都会に憧れ、18歳からデザインの世界へ。

日本の最先端、憧れの東京で企画デザイナーとして勤務するも、生み出していくことが破棄や労働の搾取に繋がる矛盾に直面し、その関心は 生み出すしくみと課題解決に繋がっていかれます。

 

 

 

 

その後、ファッションが好きというまっすぐな気持ちと 故郷の大自然で過ごした原体験をお持ちの大坪さんは、海外発展途上地域の縫製業界へも視点を向けられ、
循環をテーマとして立ち上げたご自身のブランドには、県内外のコアなファンが多く集まっています。

そんな大坪さんは、柔らかく優しい雰囲気の中にも 自分で見たものや感じたものを信じる冷静な強さを感じる方です。

 

 

このように異なるご経歴をお持ちのおふたりが「技術・自律・循環」というテーマで呼び寄せられ、昨年立ち上げられたのが地域循環型縫製工房MAARUFACTORY。

 

目まぐるしく稼働する工房での日々は、毎日が仲間と共に走ることの意義や感謝に直面することだらけだと言います。

そこで痛感するのは、どのような仕事も、自分一人では成り立たないということ。

支えてくれる誰かがそこには必ずいるということ。

だからこそ 工房の仲間皆にも、この工房を「自分の居場所」と感じてもらえるかが 工房の在り方の重要な視点となっています。

 

 

 

 

・MAARU FACTORY が工場の「在り方」にこだわる理由

〜「 働く× 居場所 」が自分らしさを叶えると信じて 〜

 

 

生きるということは、どのようなことがあってもこの先に道が続いていくということ。

そして私たちは日々、生きる姿勢や行動の選択を問われ続けています。

 

「選択は、自分で選ぶだけではない。

 選択肢を自分で作っていくこともできる。

 この気持ちに変わった瞬間から、その人は自分の足で立つ人に変わっていく。」

 

 

その言葉をまさに行動に変え、工房に立つ野原さんと大坪さん。

そして縫製スタッフの皆さんや、集まり続ける多くの心強いサポーターの方々。

 

 

きっと、彼女・彼らには、人知れず社会から孤立感を感じ、自尊心の喪失に苛(さいな)まれた時期があり、そんな自分を飛び越えて踏み出した一歩がある。

だからこそ、自分の意思と選択で前に進もうとする人の力になりたい、そして、この沖縄という土地もそうあってほしい。

そんなお気持ちが伝わります。

 

 

MAARUの思い描く「居場所」は、ただ優しいだけの場所ではない。

「自分自身の足で立つ」と決めた人たちが、互いに助け合い、少しずつでも挑戦しようとする姿勢を尊敬・応援し合える場所。

そんな風に、自分らしく続け、自分の力で乗り越え、そして仲間と共に成長した時間の先に、「技術」という確固たる自信はきっとついてくる。

 

 

「地域循環型」を掲げる縫製工房のめざす「循環」とは、故郷の自然や在り方に感謝し、

恩返しするように行動し、縁を繋ぐ2人が舵を取る「価値づくり」のしくみ化。

 

 

MAARU FACTORYという場所はきっと、ものづくりにとどまらない、自律する「ひとづくり」の工房であるかもしれません。